♯4で氷雨ちゃんが最終的にたどり着いた答えが「寂しさを我慢して明るくふるまう」なの、年相応なのかもだけどやっぱり何かこう救いが欲しいな…と思った妄想です。調子が出なかったので箇条書きみたいな感じ。


 空港の会員制のラウンジにイギリスへ旅立つななとお見送りの氷雨が入ってくる。
「こんな素敵なところ……本当に使ってもいいの?」
「はい、祖父が会員なんです」
 にっこり笑う氷雨。ななは窓辺にあいた席を見つける。
「あそこに行こう」
「はい」
 近寄るとカップルシートしかあいてない。
「困りましたね……」と氷雨。
「なにも困らないよ」とななが促し、二人でシートに座る。氷雨がドリンクを用意するが、二人ともそれにはほとんど手をつけず、窓の外の飛行機を見ている。ラウンジは寝る人もいる。時刻は夜ということもありとても静か。

「すみません、ここじゃお喋りできませんね」
「昨日たくさんしたし、これからもたくさんできるから」
「……」

 氷雨は別れが寂しくて、それを紛らわせるために明るくしたいのに、これでは寂しさばかりが募ってしまう。我慢しなくちゃ。自分が寂しくなったら、相手に気を遣わせてしまう……。考えるほど思考は追い詰められ、孤独感が胸を締め付ける。早くフライトの時間になってと願うものの、時計の針の進みは遅い。ななさんを明るく笑って送り出したいのに。
「寂しいな、氷雨ちゃんとお別れするの」
 なながぽつりと漏らした。
 氷雨がびくっとする。まさかなながそんなことを言うとは思わず、言葉に詰まる。
「氷雨ちゃん……?」
「イギリスで、神楽さんが待ってますよ。新しい舞台も、新しい仲間も……」
「うん、それはとっても楽しみ。でも、それとこれとは別だから」
 ななから氷雨の手を握る。
「不思議です。私もさっきまで寂しかったのですけど」
「そうなの……?」
 氷雨はななの手を握り返し、撫でる。
「薄らいだ気がします」
「氷雨ちゃん、ずっと笑ってるから、平気なんだと思ってた」
「寂しいです、すごく……寂しいです」
 けれどそういう二人の顔に、もう憂いは見えない。

「遊びに来てね」
「はい」
「絶対だよ」
「絶対、行きます」
 氷雨はななの姿が見えなくなるまで手を振り続け、飛行機が見えなくなるまで空を見上げ続けた。

#ひさなな #SS
たたむ

らくがき